特集記事
2023.08.14
河村勇輝|ホーバスバスケの申し子が世界に挑む
河村勇輝|Yuki KAWAMURA
PG/172㎝/68kg/2001年5月2日生まれ/横浜ビー・コルセアーズ/東海大学出身/山口県出身
世界に挑む!男子日本代表候補インタビュー
河村勇輝|ホーバスバスケの申し子が世界に挑む
スピードのあるオフェンスとアグレッシブなディフェンスが持ち味
福岡第一高校時代からU16やU18といったアンダーカテゴリーの日本代表として活躍してきた河村勇輝。自身も持ち味として挙げる「スピードのあるオフェンスとアグレッシブなディフェンス」が最大の武器で、その速いテンポの中で司令塔としてゲームマネージメントをしつつチームをコントロールできるのは、小さいときから憧れていた選手がそうしたスタイルだったことも影響している。
河村は小学6年生のときに全国ミニバス大会に出場しているが、148㎝と小柄ながら抜群のテクニックでエースガードとして活躍。チームを優勝に導いているが、試合後のインタビューでは「田臥勇太選手と富樫勇樹選手が目標です」と語っていた。その頃から、身長がなくてもそれをスピードやテクニックで補ってきたため、「今やっている色々な動きや考え方は、そうして積み重ねてきた基盤が一番大きいんじゃないかと思います」と言う。
そんな河村が、日本代表に選出されたのは2022年2月、20歳のとき。トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)が求める速い展開にマッチするプレーヤーと見込まれてのことだが、当初は戸惑いもあったという。それは、河村のプレースタイルがどちらかというとパス主体であったから。ドライブ、3Pシュートともともと得点能力もある河村だが、「パスファースト、アシストファーストのマインドを持ったポイントガードを目指していて、それを一番の核に置いていました」と言う。ところがホーバスHCは河村に得点も求めた。「トムさんからは、『世界で通用するためには、得点するチャンスを逃してはいけない。得点とパスのバランスをしっかりと持って、選択肢としてどちらもできるようにしておかないといけない』というアドバイスをいただきました」と河村。
代表活動を通して成長した河村はB.LEAGUE2022-23シーズンのMVPを獲得
そうしたホーバスHCの要求を自分に落とし込む力を持っていた河村は、その後、さらに覚醒する。「その気持ちを持ち始めてから、さらに自分の強みであったパスやアシストが生きるようになったと思いますし、少しずつ幅の広い選手になっていってるんじゃないかなと思っています」と、現在では自分でも手応えを感じている様子。河村は6月2日に行われたB.LEAGUE AWARD SHOW 2022-23で「B1レギュラーシーズンMVP」を含め、「レギュラーシーズンベストファイブ」「新人賞」「ココロ、たぎる。賞」「レギュラーシーズンMIP」「アシスト王」の6冠を獲得しているが、それこそは日本代表活動で得たものをB.LEAGUEでも表現したことの結果と言えるだろう。
また、それとは逆にB.LEAGUEで経験したことが日本代表の活動へも還元されている。「最近のB.LEAGUE では外国籍選手のポイントガードも多くなっているので、日々の試合の中で、外国籍選手とマッチアップする機会があることが僕を成長させてくれています。横浜ビー・コルセアーズのディフェンスも、ポイントガードの選手にポストアップされたときは、ダブルチームではなく自分1人で守るというコンセプトなので、そうしたことも試合を通じて成長できている要素となっていると思います」と河村。シーズン中、自分より身長の高いポイントガード相手に常に高い強度で戦っていることが、日本代表として海外のチームと対戦する際に引けをとらない要因となっているのだ。
大舞台でこそ力を発揮するのが河村
来るFIBAバスケットボールワールドカップ2023について、河村は「自分の目指していた一つの場所。日本代表になるだけでなく、しっかりと結果を残すことが目標です。その目標を達成するために日々練習しています」と強い決意を示す。チームとしてはパリ2024オリンピックの出場枠を獲得できるアジア1位になることを目標に掲げているが、「その目標に少しでも貢献できるように、自分の役割を最大限発揮したいと思っています」と河村。
また最近は河村個人としていろいろなメディアへの露出も多くなっているが「そうして注目されることは緊張しますし、責任もあり、もちろんプレッシャーもありますが、それはすごくありがたいこと。その力をさらに僕の中のモチベーションの一つにして、やっていけるかなと思ってます」と言う。その点に関しては、河村の言葉の通り、注目されるほど力を発揮するのが河村と言う漢だ。小6で臨んだ全国ミニバス大会では、追いかける展開となった決勝戦、終了間際に河村が決めたバスケットカウントが決勝点となり1点差で優勝を飾った。福岡第一高校では1年生から正司令塔を務め、3年生のときには創部初のインターハイ&ウインターカップ優勝で締めくくった。そして高校卒業を控えた2019-20シーズンは特別指定選手として三遠ネオフェニックスに入団。当時のリーグ史上最年少記録(18歳8か月)でB1デビューを果たした。東海大学では、1年目はルーキーながらインカレ優勝に貢献。そして前述のように、2022-23シーズンはシーズンMVP&新人賞を獲得。注目されるほど輝きを増すのが河村なのだ。
日本の司令塔として世界に挑戦する
今回、FIBAバスケットボールワールドカップ2023に挑むメンバーの中では若い河村だが、「コートに入ったら、年齢関係なくコミュニケーションを取るようにしていますし、そこは臆することなくプレーするようにしてます」と頼もしい。その上で「一人一人がちゃんと自分の役割を分かっていて、自分の役割を最大限徹底して発揮する、自己犠牲のできる選手の集まりなんじゃないかなと思っています」と仲間たちを信頼している。それでも、世界の強豪たちを相手にアジア1位になるのはたやすいことではなく、「バスケットは5対5で戦うスポーツですが、最終的には一人一人の能力のステップアップが世界で戦う上で大切になってくると思っています」と現実も見ている。
「オフェンスでは、スピードの部分で先頭に立って展開できればいいなと思っています。ディフェンスではアグレッシブに守って、僕が背中でコートに立っている選手に気迫を見せていければいいなと思っています。相手のポイントガードにしっかりプレッシャーをかけることで、相手のオフェンスのリズムを崩していけると思っています。速いバスケットのオフェンスとアグレッシブなディフェンスのどちらとも先頭に立って、やっていきたいと思っています」と河村。攻守に渡り、恐れず先頭に立って挑む覚悟を持った河村が、日本代表に欠かせない要素となることは間違いない。