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2023.08.17

馬場雄大:復活に向けての“笑み”

フリースローラインに立った馬場雄大の顔に笑みが浮かんだ。

8月15日に行われたSoftBank CUP 2023(東京大会) バスケットボール男子日本代表国際強化試合、日本代表対アンゴラ代表の試合の第3クォーターでのこと。前半に渡邊雄太が故障で離脱し、故障明けのジョシュ・ホーキンソンも出場時間制限で後半は不出場と主力を欠くなか、馬場は後半、何本も思い切りがいいドライブインで攻め続けた。3Q残り3分59秒のこの場面でも、マークマンを抜き去り、ゴール下で待ち構えるビッグマンからのファウルを誘って、フリースローを獲得した。そんな場面で見せた笑顔だったが、自分のドライブインに満足して笑ったわけではなかったという。

「あのフリースローの1本目を打つときに、自分で、なんでこんなに力入ってるんだと思って、ちょっと笑っちゃったんすよ。そこから何か楽しくなっていったというか、バスケットボール楽しまないと、と思って」と、馬場は試合後にその場面を振り返った。

正直、前半の馬場はあまりいいところがなかった。中に攻め込もうとはしていたが、中途半端に止まってしまったり、ボールを取りこぼしてターンオーバーも犯した。第1クォーター終盤にはせっかくフリースローを得ながら、2本とも外してしまった。その後ベンチに下げられると、2Qは出番がないままハーフタイムを迎えた。

「前半のあの感じは納得いくものではなかった。このままで終われるかって思いでやるしかなかった」と気持ちを切り替えて後半に向かったと語る。
そんななかで、知らず知らずのうちに肩に力が入っていたのだろう。フリースローラインに立ったときに自分でそれに気づき、試合中にリラックスすることができたことで、その後、持ち前のアグレッシブなプレーを出しながら、空回りすることなくプレーすることができた。結局、馬場は後半だけでフリースロー8本獲得(すべて成功)、全10得点と、チームにいい流れを作り出した。

なかでも、第4クォーター終盤にスティールから速攻に持ちこみ、ユーロステップでディフェンスをかわしてレイアップを決めたプレーについては、キャプテンの富樫勇樹も「やっぱああいうプレーが出ている時間帯は彼(馬場)が一番いいバスケットしてるときだと思うので、あれぐらいディフェンスも(オフェンスも)アグレッシブに(やってほしい)。なんか、あれ、久しぶりに見たなっていう感覚です」と喜んだ。

富樫が「久しぶりに見た」と言ったように、アンゴラ戦の前半だけでなく、ここまでの強化試合で、馬場はどこか波に乗れていなかった。馬場自身も、自分のプレーについて「全然駄目ですね。全然納得いくものではないです」と認める。4年前から海外で活動し、国際大会の経験も豊かな馬場だが、ワールドカップに向けてのロスター競争の中では最後の12人に残って当たり前という状況ではなかった。馬場自身、若手選手たちの突き上げと自分の不調もあり、ロスターに入れるかどうかの危機感を感じながらやっていたという。

「下からの勢いと、やっぱり結果を残していかないといけないという立場で、なかなか納得いくプレーができなくて。本当にこのままでいいのかっていうことをずっと思いながらやってますし、ひとまず12人に選んでもらって、ここからが勝負だと思っています」

実際のところ、日本がワールドカップで格上の諸外国に勝つために、馬場は欠かせない選手だ。トム・ホーバスヘッドコーチも、アンゴラ戦後に彼について聞かれ、こう話した。
「馬場の力が大事だよ。彼はもう、経験もある、ディフェンスもできる、フィジカルプレーもできる、ドライブもできる。今あまりよくないけども、練習中に3ポイントシュートもよく入るんですよ。あの力がもう必要。大事です。だから本当に、彼は(アンゴラ戦の)後半から、もっともっともっとステップアップしてほしいです」
「もっと」を3度も繰り返したところに、馬場への期待の大きさがうかがえる。馬場によると、ホーバスHCは馬場に対して、「お前が必要だ」「もっといい(選手な)のはわかっている」と、何度も言い続けてくれたのだという。

キャプテンの富樫も、迷いからか、馬場が調子を出せずにいるのを見て、何とか本大会までにリズムを取り戻してほしいと話す。
「ちょっと(迷いを)感じられる場面はやっぱ多いかなと。それは練習を見ていてもそうですし。ハーフコートになったときの戸惑いだったり、僕も感じるとこであるので、ワールドカップまでには彼がストレスなくプレーできるように、僕も(馬場に)話をして、(サポートを)やっていきたいなと思います」

そんな馬場にとって、復活のヒントには、アンゴラ戦の後半で見せたアグレッシブなプレーと、笑みにあるのかもしれない。
「納得いかないこともありますけど、瞬間、瞬間を生きていくしかないので。楽しんでいきます」と馬場は言い、ワールドカップに向けて力強く語った。
「最高の状態でワールドカップに入れるように、(大会までの)あと2試合、準備していこうと思います」

文 = 宮地陽子

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