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2023.08.18

自信と課題──。成長を続ける、日本の“秘密兵器”、川真田紘也

渡邊雄太から「秘密兵器」と呼ばれた男、川真田紘也は、試合に出るなり、フランスのガード、シルヴァン・フランシスコのドライブインからのレイアップをブロックし、ゴール下の守護神としての存在感を示した。しかしその直後、今度はピック&ロールに対するディフェンスのリカバリーが遅れ、マークしていたルディ・ゴベールにゴール下のノーマークダンクを叩きこまれてしまった。

8月17日に開催されたSoftBank CUP 2023(東京大会) バスケットボール男子日本代表国際強化試合、日本代表対フランス代表は、日本代表にとってFIBAワールドカップ前の強化試合のなかでも一番の強豪、FIBAランキング世界5位のフランス相手の、腕試しとなる試合だった。2日前のアンゴラ戦で右足首を捻挫した渡邊雄太を欠いた日本は、それでも前半はほぼ互角についていき、第3クォーター半ばには2点差まで迫る戦いを見せた。その後、突き放されて70対88で敗戦。

敗戦後にトム・ホーバスヘッドコーチは、課題が見えたことも指摘しつつ、世界との経験が少ない若手選手たちが気持ちで負けずにフランス相手に向かって行ったことを称賛した。
「みんなが自信あって、うちのバスケットをやった。それは大きいですよ。よくやったと思います。まだ足りない部分もあったけれど、私はまだポジティブです」

強豪相手でも自分たちのプレーが通用した部分があったという自信と、40分間で少しでも気を緩めると小さなミスとなり、それが重なることで最後には18点という点差になってしまうという世界の壁の高さ、その両方を感じた試合だった。冒頭の川真田のプレーは、まるでそれを象徴するような場面でもあった。

川真田にとっては、フランス戦に限らず、代表としての毎日が、そんな自信と課題の間にあった。この試合で川真田がマッチアップしたのは、NBAの最優秀ディフェンス賞を3回受賞したことがあるルディ・ゴベール。もっとも、「NBAはほとんど見ない」という川真田は、ゴベールのこともそれほど詳しく知っているわけではない。それでも、試合のスカウティング動画で見るだけでも、すごい選手だということはわかったという。

そんな選手を相手にしても、気持ちだけでは負けないように、とにかく必死に食らいついていった。自分ではシュートは1本も打たなかったが、味方が得点しやすいように相手選手に身体をぶつけ続けた。0得点、4リバウンド、1ブロック。決して華やかなスタッツではないが、彼の献身的なプレーは日本代表にとって欠かせないものになりつつある。

川真田は、試合後にフランスとの戦いでの収穫をこう語った。
「当たり前なんですけど、自分より技術も身体的にもすべてが上だったんですけれど、僕もそんな急に身長伸びるわけでも、体重が増えるわけでも、技術があるわけじゃないので、気持ちの部分では負けないという信念。そこで負けたら、すべて負けなんで。そういう気持ちの部分を前面に出してできたところは一つの評価かなと思う」

「急に身長が伸びるわけでも、体重が増えるわけでもない」というのは、川真田がこの代表活動中に何度か繰り返し口にしてきたことだ。これまで体験したことがないレベルの選手を相手にして、もっと大きくなりたい、強くなりたいという気持ちはある。そんな焦る気持ちを封印し、目の前にある仕事に全力で向かっていく。そうやって地道な努力をすることが、自分がチームに貢献する道だと信じてやってきた。

FIBAワールドカップ予選のために、何度も川真田を代表合宿に呼んだトム・ホーバスヘッドコーチだが、少し前に、彼に対する最初の印象はあまりよくなかったと明かした。
「彼は若くて、ボディランゲージや、ちょっとした行動が子供のようでした。少し話をして、それから彼は、人として、選手として、本当に成長したと思います。プロの選手になってきました」

川真田によると、実際、ホーバスHCからは怒られてばかりだったという。
「リバウンドのボックスアウトひとつにしても、ディフェンスのシステムにしても、いろいろ怒られました。でも怒られたことが今につながってると思うので。基本的に、怒られながらもいろいろ吸収していってここまで来れたのかなと思ってます」

たとえばディフェンスのときにあげる手の位置や、ディフェンスのポジション取りなど、ひとつひとつは細かいことなのだが、世界を相手とした試合では、それがどれも命とりとなってしまう。フランス戦で、小さなミスが重なって18点差になったように。

ホーバスHCからは、代表ロスターを外れるたびに、よかったところと、課題を指摘されたという。
「いいとは言ってくれるんですけど、やっぱり明確に足りない部分もたくさんあって。毎回、いい部分と悪い部分を両方言ってくれていたので。毎回、(代表合宿に)来るたびに、その悪い部分をどんだけ改善できるかっていうのを考えてできた。それを解消してきたことで、今につながってるのかなと思います」

NBA選手を相手にしても当たり負けしない身体の強さは彼にとっての財産だ。その財産を生かすためのメンタリティも身についてきた。あとは、世界の舞台で強い相手に本気で戦うことで経験を重ね、成長し続けるだけ。
「僕の仕事は、明確にディフェンスからとわかっている。(ホーバスHCから)『これをやれ』『あれをやれ』と言われたら、それに全力で応えるのが僕の仕事なので、全力でやりたいと思います」

文 = 宮地陽子

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