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2023.08.20

河村勇輝:貪欲に学び続ける若武者

「すごい楽しみですね」

SoftBank CUP 2023(東京大会) バスケットボール男子日本代表国際強化試合、日本代表対スロベニア代表の試合前日、河村勇輝は目を輝かせて、そう言った。スロベニアのスーパースター、ルカ・ドンチッチを相手に、自分の力がどれだけ通用するか楽しみかと聞いたときの答えだ。

河村にとって、スロベニア戦とその前のフランス戦は、FIBAバスケットボールワールドカップを前に世界トップレベル、ヨーロッパのレベルを体感できる絶好の機会だった。特にドンチッチはNBA屈指のスーパースター。201cmの長身ポイントガードで、パワーもある。決してスピードや高い身体能力があるわけではないのだが、それでも研ぎ澄まされたパス感覚や、スピードの緩急やステップを巧みに操り、試合を支配する。

ふだん、好きなクリス・ポールやトレイ・ヤングの試合を中心によくNBAを見ているという河村に、試合に向けてドンチッチのスカウティングレポートや動画を見た印象について聞くと、ひとしきり「んー」と唸ってから、こう続けた。

「もう、彼、何でもできますからね。見てても、本当にアンストッパブルな選手だなっていうのは思うので。事実、1人で止めきれない部分はあるので、だからこそ僕はオールコートのところではしっかりとプレッシャーをかけながら、彼のオフェンスのリズムを少しずつ狂わせていくっていうところを一番フォーカスしてやりたいなっていうふうに思うし。ハーフコートでばんばん止めるというよりは、少しずつプレッシャーをかけて相手にストレスをかけさせながら、オフェンスのリズムを狂わせていくっていうところをやっていければいいなと思っています。もちろん体格差はあるものの、気持ちの強さっていうのは絶対負けてないと思うんで、そこを前面に出していければいいなというに思います」

試合開始直後、ドンチッチのマークを任された河村は、サイズの差を補うようにドンチッチの胸元に入りこみ、激しくマークした。直後にマークしている上から楽々と3ポイントシュートを決められた場面もあったが、別なときには馬場とダブルチームを仕掛けて、富永のスティールにつなげた場面もあった。最終的にドンチッチは23点、7アシスト、7リバウンド。魔術師さながらのビハンドザバックパスからのアシストや、鋭いパスで何度も会場を沸かせ、とても「オフェンスのリズムを狂わせる」ことはできなかった。

試合後、河村も「いやぁ、もう本当すごかったですね。アンストッパブルなところがあったんじゃないかなっていうふうに思います」と脱帽した。

しかし、だからといって、収穫がなかったわけではなかったとも続けた。
「マッチアップしてもすごく学べるものはたくさんあったなと思う。もちろんやられた部分はありましたけど、逆にこのマッチアップをして学べた部分もたくさんあったかなと思います。スペーシングの取り方だったり、ピック(スクリーン)への対応の仕方だったり、ファウルのもらい方みたいなところは、Bリーグではないようなもらい方があったり。アピールもそうですけど、そこはすごくスマートだなってように思いました」

映像ではなく、実際にコート上で体感したからこそわかることも多い。この貪欲な姿勢があるからこそ、日々の成長がある。

オフコートでも、河村は日本語が堪能なトム・ホーバスHCとも英語で話すことが多いという。ホーバスHCによると、河村のほうから英語で話したいと希望してきたのだという。将来、海外でプレーするための準備なのだろう。

まだ22歳。だからこそ、強豪相手の強化試合の経験が大事だった。それが、東京での3試合で河村をスターターに起用した理由のひとつだったと、ホーバスHCは明かす。
「この3ゲームは、カワムラのために大きいかなと思いました。だからスターティングポイントガードにした。カワムラは経験あんまりないじゃないですか。彼は本当に頑張った」

ハムストリングの故障で、河村が代表戦に復帰したのは8月2日のニュージーランド戦。それから半月が過ぎたが、ホーバスHCいわく、まだコンディショニングやリズムが完全に戻ったわけではないという。
「彼は言い訳しない。でも、まだまだ、彼のタイミングはまだプレシーズンぐらいかなと思います。だから、この3ゲームでいっぱい出したかった。で、よくなってきたと思います。彼は、これから(大会までの)1週間が大きいかな。多分大丈夫と思う。僕はもう彼の全然心配してないです。できると思います」

ワールドカップ本番まで1週間を切り、日本代表の準備も最終段階に入る。河村も、現実は受け止めつつ、自信を失わずに大会に向かいたいと気を引き締めた。

「危機感を持たないといけないなというふうには思いますね。スロベニアのチームは、雄太さんも言ってたんですけど、強豪国って言われる中でも日本にとってすごい相性の悪いチームだと思うので、この30点差っていうところはそこまで自信をなくさなくていい、そこはしっかりと受け止めながらも、やっぱ勝てなかったっていう現実はしっかりと見て。同等のレベルのドイツ、オーストラリア、フィンランドと戦うわけで。(ワールドカップは)『いい試合をした」で終えれるような大会ではない。勝つためにあと6日間、何が必要なのかっていうのを1日1日、詰めながらやっていきたいと思います」

文 = 宮地陽子

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